債務整理で、車を所有し続けることは可能?
債務整理を行うときに財産を処分しなければならないのではないかという不安がありますが、原則として処分が必要になるのは自己破産で特定の条件に該当している場合だけになるため、他の方法で行うのであれば財産をそのまま所持することができます。
ただし、その財産の所有権がどこにあるかによっても扱いが変わることを知っておかなければなりません。
例えば自動車販売店から車を購入する際にカーローンを組むことがあります。
このときに自分の名義になっていれば所有権がありますが、金融機関の名義になっていると所有権がないのでローンの支払いができなくなれば売却して返済に充てなければならず、手元に残せません。
所有権の問題であるため自己破産以外の方法で債務整理をしても守ることはできないので、ローンを組むときは誰に所有権があるのか確認しておきましょう。
また、債務整理の制度自体では売却する必要がなくても減額だけで対処しきれないようなときには売却して支払いに充てることになります。
任意整理の場合、法定金利を超える貸付があれば引き直し計算によって過払い金の分が減額できますが、適切な金利が適用されていると減額されません。
金利や返済期間によって違いがありますが、減額効果が高い方法ではありません。
取り立ての停止や今後の利息のカットを行えるメリットはありますが、残金は3年から5年で分割で返済しなければならず、これが難しい場合には財産を処分して支払うか他の債務整理で対処しなければなりません。
なお、任意整理は対象とする債務を選べるという特徴があります。
カーローンを組んで自分の名義にはなっていない場合、これを整理の対象にした場合は売却しなければなりません。
しかし、カーローン以外にも債務があり、それらを任意整理で利息をカットすれば返済できる場合にはこの方法で車を守ることができます。
個人再生は財産を残したままでも大幅な借金の減額ができる効果の高い債務整理になりますが、これも単純に減額できるものではありません。
お金を借り過ぎて生活が困難になった人を救済するための制度ですが、無条件に減額を認めてしまうと債権者が一方的に損失を被る制度になってしまい、悪用される危険性もあります。
これを避けるために債権者側の損失も考慮して借金は減額しても財産の総額までが限度とする規定があります。
一般的なものであれば減額の金額に影響を与えることはありませんが、非常に高額な査定が付く車を所有していれば減額効果は低くなります。
高価なものを購入してから個人再生することで財産を所有したまま支払額を減らす、結果的に高価なものを安価で入手する不正はできないようになっています。
財産の総額が高すぎて減額後の借金が返済できない金額になるのであれば、財産を処分する必要があります。
自己破産の場合は財産を処分しなければならないペナルティがありますが、全ての財産が対象になるわけではありません。
99万円以下の現金と時価20万円以下の財産、生活必需品に関しては手元に残せます。
財産は「時価」で判断される!
ここで考慮するポイントとして財産は購入時の金額ではなく時価で判断されます。
購入時の金額が100万円以上するものであってもローンが残っておらず、何年も使用しているものであれば時価は低くなっているので残せることが多いです。
ローンの返済中のものであれば、前述のように所有権が債権者にあれば売却しなければならないので残せません。
一括返済して自分の所有権に変更する方法もありますが、これは手続きに失敗する要因になる危険性もあるので注意しましょう。
処分した財産は債権者に均等に分配されるものなので、手続きの前に特定の債権者に偏った返済を行うことは不公平になるため禁じられています。
自分に所有権がある場合でもまだ新しいものであれば時価は20万円を超えてしまうことが多いので処分の対象になります。
生活必需品に関してはテレビやタンス等で必要以上に高価なものでなければ処分対象からは除外されます。
車を生活必需品として扱うかは裁判所の判断に委ねられており、状況によって変わるので申請する必要があります。
一般的に仕事で使うのでないと困るという理由では生活必需品とされる可能性は低くなります。
病気で通院するためであったり、介護するために必要などの場合であれば認められることがあります。
なお、自己破産で処分の対象になる財産は破産手続きを行った本人のものだけになります。
家族に所有権がある財産まで処分する必要はないため、例えば自分が破産手続きを行うときに子供が車を所有しているような場合にはこれが処分対象になることはなく、破産後も子供に借りて運転もできます。
しかし、これを悪用して財産隠しをすれば免責が認められなくなるので注意しましょう。
破産手続きをする前に自分名義の財産を家族の名義に変更した場合などがこれに該当するので、この方法で守ることはできません。