返済義務が残る任意整理
借金問題解決の手段として用意されている債務整理。債務整理の中でも最も成立件数が多いのが任意整理です。債務整理の9割以上を占める任意整理ですが、任意整理をすれば借金を返済しなくてよくなると勘違いしている人は少なくありません。
任意整理は借金の返済負担を軽減できますが、基本的に元本の減額はなく、債務整理手続き成立後も返済義務は残ります。返済負担を軽減する代わりに返済計画を見直して借金完済をめざす、というのが任意整理の基本です。
任意整理のメリット
任意整理のメリットは成立可能性が高くスピーディーに解決できることです。任意整理は自己破産のように債務が免責されることはありません。借金を返済することを前提にした債務整理なので債権者の同意を得やすく、大きな問題がなければ高い確率で成立します。手続きそのものは弁護士に任せればすべての作業を代行してもらえます。
公的な仲介などを必要としないので、債権者と債務者の間で合意が形成できればスピード成立します。借金の内容によっては1週間程度で任意整理が完了することもあり、自己破産手続きが2~4カ月程度かかるのと比べると、非常に短い期間で借金問題が解決できます。
任意整理後の返済計画の目安
借金の返済期間は基本3年が目安
任意整理手続きでは、将来利息のカットや過払い金返還請求で引き直し計算して算出された残債を一定の期間、分割払いで返済して完済する返済計画を立案します。任意整理後の返済期間は3年を基本に設定されます。
なぜ返済期間3年が基本になるのか。それは過去の裁判の判例や調停案が3年の返済期間を提示しているからです。債務整理方法のひとつである個人再生では、裁判所が債権者と債務者の間に立ち、借金整理の調停案を出します。裁判所が出す調停案は3年で返済することを原則としており、任意整理もそれに沿う形で返済期間3年を基本に返済計画を立案しています。
借金の額によって返済期間が変わることも
任意整理後の返済期間は3年を基本に設定されますが、借金の額によってより長期間の返済計画が認められる場合もあります。返済期間を長期化すると毎月の返済金額が低くおさえられます。
安定した収入があって返済能力も認められるが、借金が高額で3年の分割払いだと毎月の返済負担が重すぎると判断された場合は、債権者の合意のもとで返済期間が3年を超える長期に設定されます。
任意整理後の返済期間は最長で5年というのが一般的な基準です。5年を超えるケースもありますが、5年の分割払いで返済しきれないような借金は任意整理以外の方法で債務整理を目指すのが一般的です。
毎月の返済額は収入の3割が上限
毎月の返済額の目安は、おおよそ月収の2割に設定するのが無理なく返済を続けるコツです。月収の2割なら生活費と返済金を引いても多少のお金が残る計算になり、少ないながら貯金する余裕もあります。生活への影響を最小限におさえるなら、月収の2割を基準に返済計画を立てるとよいでしょう。
借金が高額だったり早期返済する必要がある場合でも、毎月の返済額は収入の3割が上限だといわれています。収入の3割を返済に回すとやりくりはできるものの、生活水準に影響が出るか出ないかギリギリのラインです。収入の4割を返済に回すとなると、生活の大部分を切り詰めなければ追いつきません。
早期返済は悪いことではありませんが、ある程度の生活水準を維持するのが完済のコツです。食べたいものを我慢してでも返済を優先するような生活は、心身の健康を大きく損ないます。無理をした反動は必ずどこかで影響が出ます。長期的な視野に立って確実な完済を考えるなら、毎月の収入のうち2割前後を返済額に設定した返済計画で任意整理を成立させてください。