債務整理とは?
一部では良く知られている言葉ですが、まったく関連する物事に触れる機会がない人にとっては中身が分かりづらい「債務整理」とは、要するに「借金を返済するための環境を整えること」を意味しています。中には、「債務整理を行うと借金を返済する必要がなくなる」と思っている人もいますが、その認識は正確ではありません。
おそらく「自己破産」という存在が強く認識されているためにそのような認識になっているのでしょうが、債務整理には自己破産を含めていくつかの種類があります。
債務整理の種類
- 任意整理
- 個人再生
- 自己破産
- 特定調停
- 過払い金返還請求
このうち、「任意整理」「個人再生」「自己破産」の3つ、または「特定調停」を含めた4つが一般的な債務整理です。現在は「過払い金返還請求」も含めて債務整理という認識でも間違いではありませんが、その状況はいつまで続くか分かりません。基本となる組み合わせ(主に3つ)が債務整理だとして認識しておくと良いでしょう。
債務整理の種類ごとの特徴
任意整理
任意整理とは、「将来利息」を減額または免除、ならびに遅延損害金の廃止などを条件に、元金の完済を約束する方法です。「任意」整理というだけあって、債権者と債務者が直接交渉によってやり取りをし、交渉がまとまった(和解)場合にはその内容が適用されます。
元金のみを返済すれば良い状態になるので、金利や遅延損害金が適用されている状態と比べると負担が大幅に減少します。ただし、毎月返済すること、完済することが条件として重要な意味を持ってくるため、「根本的に返済の可能性が低い」と判断された場合は交渉がまとまらない(和解できない)可能性があります。
任意整理のメリット、デメリット
まずは、任意整理を行うメリットを紹介します。
- 裁判所を介さないので手続きが簡単
- 周囲に知られにくい(裁判所を介さない、官報掲載がない)
- 余計な支払い(利息)がなくなる
- 職業、資格の制限がない
- 任意整理の対象を選ぶことができる(保証人付きのものは任意整理の対象に含めないなど)
- 資産を強制処分する必要がない
- 過払い金返還請求を同時に行える
続いて、任意整理を行うデメリットを紹介します。
- 一定期間(約5年)は新たな借金やローンを組むことができない
- 実質的な減額となるものの、債務自体は変化しない
- 和解が成立しなければ効果が適用されない
個人再生
個人再生とは、任意整理とは違って裁判所が介入します。債務者、債権者との直接交渉による手続きではないため、半強制的に交渉の場が得られる点が特徴です。
裁判所が介入するため手続きの面倒さなどは大きくなってしまいますが、見事に成立した場合には大幅な債務減額(1/5程度)が可能です。また、資産が強制売却とならないため、家や車を持ち続けながら債務の減額を行うことが可能です。
ただし、個人再生の場合は返済期間が指定されます。3?5年の間で減額後の債務を完済する必要があるため、そもそもその可能性が見込めない状況では承認されない可能性が高いです。
個人再生のメリット、デメリット
まずは、個人再生を行うメリットを紹介します。
- 債務の減額幅が大きい
- 職業、資格の制限がない
- 資産を強制処分する必要がない
続いて、個人再生を行うデメリットを紹介します。
- 利用する条件が厳しい
- 裁判所を介する手続きとなるため、手間と時間がかかってしまう
- 債務を限定することができない(住宅ローン以外のすべてが対象)
- 保証人に債務が移行する
- 周囲に知られやすい(裁判所へ通う、官報に載る)
- 一定期間(5~10年)は新たな借金、ローンを組むことができない
自己破産
「借金苦に陥っている人が選択する最終手段」といった認識で知られる自己破産とは、裁判所へ破産申し立てを行い、申し立てが認められる(免責許可)ことで債務が免除されます。一部、自己破産で免除されない債務(税金など)もありますが、ほとんどの債務は免除となるので生活再建の大きな手助けとなります。
ただし、自己破産を申し立てた人全員が認められるわけではなく、「間違いなく返済不能な状態であることが認められること」が必須です。
管財人などが財産の証明などを行いますが、最終的に「返済が可能である」と判断されてしまった場合には、自己破産ではなく任意整理や個人再生が適用される可能性もあります。また、自己破産をするのに伴い「高額財産の処分」が必要です。
自己破産のメリット、デメリット
まずは、自己破産を行うメリットを紹介します。
- 債務が免除される(一部を除く)
- 申し立てるために条件がない(認められるとは限らない)
- 取り立てが止む(申し立てた段階でストップする)
- 価値の低い財産や現金を残すことができる
続いて、自己破産を行うデメリットを紹介します。
- 一部の債務が免除されない(税金、保険料、罰金、養育費など「非免責債権」)
- 客観的に返済不能であることが認められなければ免責されない
- 財産が強制処分されてしまう(高額な財産のみ)
- ブラックリスト(信用情報ブラック、官報掲載)に載ってしまう
- 一部の職業や資格取得に制限が設けられる(一時的)
- 債務が保証人へ移行する
債務整理を依頼するなら弁護士、司法書士のどちらが良い?
債務整理と行う方法として、自分自身で債権者ならびに裁判所に対する申し立てなどの手続きを行う選択肢もあります。十分に知識を持っている人ならば自力で対応することも可能ですが、特に債権者とのやり取りでは「専門的な法律知識」などが必要になってくるため、専門家の援助を得た方が賢明です。
債務整理を依頼できる専門家として、「弁護士」「司法書士」という選択肢がありますが、どちらを利用した方が良いかを判断するポイントを把握しておきましょう。
状況に応じて最適な委任先を選択する
借金問題を含む「法律の問題」を解決するために最も確実な方法は、「弁護士」に依頼をすることです。弁護士は法律の専門家であり、あらゆる問題に対して的確に対応してくれる可能性が高いです。対して、「司法書士」の本業は書類の作成であり、法律問題の解決をメインで行えるわけではありません。
法改正によって「140万円以下の案件」に限っては司法書士でも担当できるようになりましたが、それを超える金額、または総合的なサポート能力などを考慮するのであれば、弁護士の方が適任です。
ただし、それぞれで依頼費用は大きく変わります。弁護士に依頼する場合の費用は高額になりやすく、あらゆる状況で弁護士の方が適切な選択になるとは限りません。比較的難易度の低い案件かつ担当可能な状態であれば、司法書士を優先する判断も適切といえます。
「得意分野」を意識することも大切
もう一点、弁護士に依頼する場合であれ司法書士に依頼する場合であれ、「借金問題の解決を得意としているかどうか」も大切なポイントです。専門家と言ってもすべてが得意というわけではなく、特定の分野(ジャンル)に特化している専門家が大半です。より良い結果を目指すためにも、「債務整理に強い弁護士、司法書士に依頼する」ということを意識しましょう。
返済不能状態に陥らないためのコツ
債務整理によって債務の問題を解決することができるとはいえ、「そもそもそういう状態に陥らないこと」が最も重要です。「とりあえず借金をしてみて、後はそれから考えよう」という考え方は非常に危険です。借金の必要性が生じた段階で、「いくらなら返せるのか」「本当に借りるしかないのか」などをよく考えることが、債務整理が必要ない状態を維持するコツです。
また、借り入れの段階で金利などをしっかりと厳選し、少しでも少ない負担で利用できるものを選択することも大切です。借金をすること自体が悪というわけではなく、合理的な理由であれば借金をすること自体は悪くありません。
問題は「無計画な借金を負った挙句に返済不能に陥ること」であり、中長期的な資金プランをしっかりと考え、少しでも合理的な選択(生活)ができるように心がけることがコツです。
コツを押さえておけば大丈夫ということにはなりませんが、コツの一つも知らないままでいるよりは遥かにリスクが小さく済みます。特に、日頃からお金に関する意識が低い人ほど、できるだけ客観的な判断をするように意識しましょう。