自己破産と任意整理の違いは何?
借金の返済に日々追われている人間にとって、「この返済がなくなるか、せめて軽くなったらいいのに」というのはかなり切実な願いと言えます。
どうしても苦しいときは救済措置
とくに苦しい状況で借り入れをしている場合、利息の率も高くなかなか元本が減らない、ちょっと返済が滞ると返済額が膨らんでいく・・・などと先の見えないところに立たされることになってしまうことも。
そのようなときには、法律上の救済措置があるため必ずしも悲観する必要はありません。
救済措置は多種多様
しかし、「借金から逃れるための手段」といっても何種類かあるためそれぞれにメリットデメリットが存在し、ケースによってはある手法のほうが良かったり、また別のケースでは片方の手段がとれなかったりと人によってとるべき手段はさまざまです。
とくに有名なのが「自己破産」ですが、これはかなり過激な手段であるため万人におすすめできるものではありません。
もうひとつ有名な方法として「任意整理」があり、こちらのほうが失うものも少なく比較的多くのケースに対応できます。
自己破産を正しく認識しよう
とはいえ事情によっては前者を選ばざるを得ないこともあるため、この二つの代表的な整理手段の違いについて見ていきましょう。
まず、借金の整理をすることの総称を「債務整理」と呼び、破産も任意の整理もこの中の一部ということになります。
自己破産とは、簡単に言ってしまうと借金をした相手に対し「もう私には支払い能力がありません、ほら裁判所がそれを証明してくれていますよ、だから借りていたお金は返しませんよ」と宣言することです。
なんだか卑怯なようではありますが、江戸時代やもっと昔から借金に苦しむ人は存在し、それを救済するシステムがありました。
現代の法律にもそれがあり、破産による免責(お金を返す責任を免れること)となります。
自己破産の手続き方法
手続きとしては、まず裁判所に対して「破産申し立て」ということを行います。
これを受けた裁判所が、「本当に支払い能力はないのか」「財産はどのくらいあるのか」「どのくらい、何か所から借金があるのか」「なんで借金をしたのか」など詳しく調査することになります。
その調査の結果、本当にどうしようもない状況であると認められれば「免責」となり、その時までに抱えていた借金はすべて帳消しとなり払う必要はなくなります。
また、保証人などになっていなければ家族には影響はなく、夫が破産しても妻は返済を要求されたり行動を制限されることはありません。
借金に苦しむ人にとっては夢のような仕組みであり、逆に貸していた側からすると悪夢のような制度である自己破産。
自己破産のデメリットとは?
しかし、当然デメリットも存在します。
まず、破産をしてしまうといわゆるブラックリストに載り、10年程度は融資を受けたりローンを組んだりが出来なくなります。
一部を除いてクレジットカードも持てませんし、官報に住所氏名が載るため調べれば「破産したんだ」ということが周囲にわかってしまいます。
また破産時には自分名義の財産は20万円以下しか持てず、それ以外は処分されることとなります。
裁判所による調査は手続きも複雑で面積の決定まで時間がかかってしまうのもデメリットでしょう。
さらに、ギャンブルなどによる借金の場合は破産申し立てが通らないこともあり、そうそう都合のよい制度とは言えません。
借金が無くなることで危機感が薄れ、またヤミ金などに手を出してしまう危険性もあるでしょう。
任意整理を正しく認識しよう
いっぽう、任意整理は自己破産と似た印象がありますが実際にはまったくの別物です。
まず、「任意」とあることから法的な手続きではなく、あくまでお金を貸した人と借りた人の間で交渉を行って借金を整理する仕組みです。
任意整理の手続き方法
具体的な手順としては、まず弁護士や司法書士など専門家に任意整理を依頼するとその専門家が貸した側に「受任通知(今から専門家が入って任意整理をしますよ、という通知)」を送ります。
これが到着すると基本的には督促は止み、交渉に入ることとなります。
ケースバイケースではありますが、たいていの任意整理では元本が減るわけではなく「利息を無くす」といった方向で話し合いが進むことが多くなっています。
専門家が無理のない返済計画を提示し、あるいは親族から借りたお金でまとまった返済をする、また過払い金返還をしてそのお金を返済にまとめて充てるなどの代わりに利息を無くしてもらうよう交渉となります。
任意整理のメリットとは?
一見すると貸した側にメリットがなさそうですが、貸す側としても「自己破産で逃げられるよりマシ」「自殺や蒸発されると貸し倒れになる」等の思惑もあり、多くの場合交渉は成立します。
自己破産とは違って裁判所を挟まないため、相手方との交渉が上手くいけばかなり短期に解決することもあります。
ブラックリストには5年ほど載ってしまいますが、官報に氏名が出ることもなく、勤務先や周囲に知られずにことを済ませることも可能です。
財産もそのまま保持出来るため、借り入れの額がさほど多くない場合は専門家を頼って任意整理するほうが無難と言えるでしょう。